ひとこと

様のつく行為の言葉

 毎日毎日、幸せになりたいと思って生活していますが、一向に幸せ満足観を感じずに居るのではないでしょうか。仏教は、安心した生活を手にする道です。お釈迦さまが最後に残された言葉に、「世間の動不動の法は、皆是れ敗壊不安の相なり」と諭されました、これまでの判断基準の再構築、ものの考え方を180度転換し、生きることを教えた道であります。

むかし朝鮮半島の歴史、中国の歴史を勉強した折、日本人の生き方に仏教が深く根付いたことに有難たさを感じました。道元さまのお示しに、「自未得度先度他」という教えがあります、「自分が渡り得なくても、先に他を渡してやる生き方をしよう」という意味です。日本人の生き方を見てみますと、このことを生活の中、言葉の中に脈々とその教えが生かされ生きています。その代表が、様のつく行為、行動、生活の仕方です。お陰さま、お世話さま、お疲れ様、ご苦労さま、ご足労さま、お気の毒さま、お互い様、ご愁傷様 等々、私たちが日ごろ自然に口にしています。

 この言葉は、自分が先に得をし他人を後回し、自分が楽をし他人を損させる、などの時には云われません。まさに自己犠牲、滅私奉公、無我夢中、一所懸命、刻苦勉励、粉骨砕身、不惜身命、不撓不屈などの時に、周りから感謝をこめ言われる言葉です。

 昔は、「苦労は買ってもしろ」と教えられ育ちました、ご飯があめて においがしても水で洗い、お粥にして食べ、お茶づけにして食べました。

私たちが集団就職した時代頃から、世の中が、所得倍増論、日本列島改造論、消費が美徳、核家族化ともてはやされ、国策が進展し、急成長して今に至っています。

「衣食足りて礼節を知る」と云いながら、はたして礼節ある社会になったでしょうか、今日発生している事件を見ましてもこれでいいはずが有りません、ゲームに熱中している子供を見ても、これで立派な人格が作れましょうかと疑問をもたずには居られません、携帯電話が現代の必需品と歩きながら、食べながら手から離しません、3Kといわれ、「きつい、危険、きたない仕事」は人材不足、好き勝手が優先し、初志貫徹を忘れ、苦節十年など夢にも見ず、いつまでたってもフリーター、どんな仕事でも3年5年と無心に勤めればプロです、それを、この仕事は嫌い、この上司と合わない、対人関係が悪いと、直ぐ辞める。このような時代、これでいいはづがありません。

多くの方々は、今の時代、「時代が違う」と云い訳します。しかし、この様な考えは社会を更に悪くし混乱させ、果ては子供の躾から勉強する学生、仕事する社会人まで、人格低下能力低下、社会制度の崩壊をも含む一大問題ではないでしょうか。ここに、これまでの発展を見かえり、何か忘れ物をしたのではないかと自戒してみる時ではないでしょうか。むかし貧乏な時代を生きてきた60代、70代80代の私たちが、雄たけびを上げるが最後の砦です。

寝る時間になったら寝ましょう、起きるときは起き、やる事を一所懸命務め、食事着物は粗衣粗食、自分を出さず周りを第一に、早く結婚し二子以上の子供を作り、自分の遺伝子を後世に残し、人類の繁栄に貢献しましょう。婚期を逸し結婚せず、先祖代々の遺伝子を自分の代で消しては最悪の業です。自分を見かえり、まずは、自分の周りから、様のつく行為の生き方を実践し示しましょう。お陰さま、お世話さま、お疲れ様、ご苦労さま、ご足労さま、お気の毒さま、お互い様、ご愁傷様等々日本人に培われた行為を日々の生活に生かし、子ども、孫、まわりの人々を導きましょう。

和尚のひとこと