ひとこと

行脚修行

H28・8・6

 古式にのっとった、雲水僧の旅をする姿がこの姿です。現在ほとんど目にしない姿ですが、禅宗の僧侶が修行に入る時は、いまでもこの姿で修行道場に入ります。

27 3年前、60歳を契機に、お釈迦さまの弟子になると強く決心し、石川県輪島市門前の大本山総持寺祖院に修行に出ていた弟子山本道興が送行(卒業)し、祖跡拝登を兼ね、興雲寺の本寺(板橋禅師の住職)御誕生寺まで、徒歩で訪問しようと行脚(現代的な自動車バス電車等を使わず、自分の足で旅をする手段)を計画し実行しました。

 祖跡拝登とは、曹洞宗を今日まで残し得た、お祖師さまの足跡、作られたお寺等を訪問し、ご挨拶の拝礼することです。わが曹洞宗の四祖に、永光寺・総持寺を開山なされた瑩山禅師さまがおられ、朝課諷経で太祖常斎大師と唱え、礼拝いたします。

 

 瑩山様から総持寺二代目を託された峨山さまが、永光寺を兼務なされた折り、道なき道を踏破され、両寺を往復され今日の宗門の根底を築かれました、その踏破し往復した道を峨山道(全長60キロ)と云い、今以って信仰心の強い僧俗者の拠り所になっております。上の写真は、祖院の裏山にある峨山道入口の石碑での写真です。

 

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 お寺に到着すると、旦過寮という部屋に通うされ、夕方の食事と明朝の坐禅、朝課に随喜し朝の粥を頂き次の目的地に向かいます。この写真は、永光寺住職の屋敷老師が丁重に送りだす記念の写真です。

 道興さんの雲水姿は、前に食事を頂く時に使う食器(応量器)を包んだ道鉢袋、その後に袈裟行李を下げています。この袈裟行李には、得度した時の師匠の血脈、袈裟、雲水を守る龍天様の掛け軸、そして道中の病気あるいは不慮の死などの時に、他人に迷惑をかけない為の金子(涅槃金)等を入れています。

 道興さんの道程は、719日に祖院を出立し、34度の炎天下の中、峨山道を通り、瑩山さまが心血を注いだ永光寺で五老峰、伝燈院を拝登し、金沢の大乗寺を経由し、永平寺、宝慶寺、わが本寺の御誕生寺に入る730日まで、延べ350キロでありました。62歳の老齢に、古式に乗っ取った行脚に感激したのか本師板橋禅師は、2回もTELして勇気を与えたとのこと、有り難いことです。行に入って3日も立ちますと、まわりの景色は輝いて見えます。鳥の声・カエル・草木・花、一切が「いのちの光明」として、この身と混然一体になり自他一如が現成します。この状態は経験したものでないと感じ得ないものです。

現代生活は、文明が進み、便利が優先し、食は飽食と、生き物が持っている本来の力を使い切っていません。時間が惜しいと云いながら自分勝手なものに時間を使い、歩きながら携帯電話、人のため社会の為は微塵もありません。これで良いのでしょうか・・・と、つくづく考えさせられ、もっと仏教を広めなくてはと、自戒する毎日です。

 

和尚のひとこと