ひとこと

境内の木 山桜の木

ヤマザクラ(山桜)の木
ヤマザクラ(山桜)はバラ科サクラ属の落葉高木のサクラ。日本の固有種で、日本に自生する10もしくは11種あるサクラ属の基本野生種の一つ。便宜的に山地に生息する野生のサクラを総称してヤマザクラ(山桜)ということもあり、品種としてのヤマザクラとの混同に注意が必要である。
特徴:ソメイヨシノのように満開を過ぎたころに葉が出るのではなく、開花と同時に赤茶けた若葉が出る
個体変異種の一つのヒロシマエバヤマザクラ。花弁の数が倍以上ある
概説
樹高は20mを超える高木で樹形は傘形。花は中輪で花弁は5枚の一重咲きで色は淡紅色。東京を基準とした花期は4月中旬。成木の成葉の裏面が帯白色になる。多くの場合葉芽と花が同時に展開するので、花が先に咲くソメイヨシノと区別する大きな特徴となる。またソメイヨシノと同じく大きくなるが、より成長に時間がかかり、花の数も少ない。エドヒガンに次いで長命であるが、その分、発芽してから花が咲くまでに時間がかかり、早くて5年、長くて10年以上、寒冷地ではさらに遅くなることもある。
ヤマザクラは野生種で数も多いため、同一地域の個体群内でも個体変異が多く、開花時期、花つき、葉と花の開く時期、花の色の濃淡と新芽の色、樹の形など様々な変異がある。新芽から展開しかけの若い葉の色は特に変異が大きく、赤紫色や褐色の他にもツクシヤマザクラでは黄緑色、緑色もあり、先端の色が濃いものなどもある。樹皮は暗褐色または暗灰色。
変種のヤマザクラとツクシヤマザクラの違い
分類学上の種としてはヤマザクラだが、その下位分類の変種レベルでは、ヤマザクラとツクシヤマザクラに分類される。ツクシヤマザクラはツクシザクラ(筑紫桜)とも呼ばれ、ヤマザクラの分布域のうち薩南諸島と九州西部に限定して分布しており、花が大きく若芽が緑や黄褐色で、若芽が赤いヤマザクラと区別ができ、見た目的にはヤマザクラとオオシマザクラの中間的な形態である。
江戸時代以前の日本におけるサクラの代表種

奈良県吉野山中千本付近のシロヤマザクラの眺望
その分布域(参照)から古来日本人に最もなじみが深かったサクラであり、江戸時代後期にソメイヨシノが開発されて明治時代以降に主流になるまでは、花見の対象と言えば主にヤマザクラであった。そのため和歌にも数多く詠まれており、「吉野の桜」とは本来このヤマザクラを指していた。野生種のため個体間の変異が比較的大きく、同一地域にあっても個体ごとに開花期が前後する。このため当時の花見は、栽培品種のクローンで同一地域では一斉に咲く現代のソメイヨシノを対象とした現代の花見とは趣が違っていた。身近にあった事から用材としてもよく使われた。
木材は家具の材料としても人気が高い。樹皮は樺細工などに利用される。
分布地域と地域内の生息域
日本の固有種で東日本を含んだ広範囲に自生するが西日本の暖温帯を中心に分布する。北限は太平洋側では宮城県、日本海側では新潟県。南限は鹿児島県のトカラ列島。オオシマザクラと同じく暖温帯に分布するため本来は常緑広葉樹林が生息域だが、むしろ人間の生活圏の拡大と共に森が伐採されて陽当たりが良くなった二次林の落葉広葉樹林の方に多く進出して生息してきた。しかし1960年代以降は林業の衰退により二次林が放置されて暗くなっている場所が多く、ヤマザクラの生息域が減少している。
中国や朝鮮半島(韓国)の一部地域にも分布しているという説もあるが、カスミザクラやオオヤマザクラの誤認の可能性が高いという。

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